古英語 動詞活用まとめ

  • 古英語の動詞活用を網羅的にまとめ、解説する。なお表記は英語版Wiktionaryのものに倣い、ウィン(ƿ)の代わりに w を使い、þ と ð は þ に統一する。
  • c, g の硬口蓋化音はドットで表記し、長母音はマクロンで示す。

強変化動詞

語幹の母音交替(アプラウトという)を伴う動詞活用を持つ動詞。変化パターンに応じていくつかのクラスに分けられる。

古英語の強変化動詞の語幹母音は「(現在) - (直説法過去1, 3人称単数) - (その他の過去) - (過去分詞)」の4種類のグループ間で交替する。以下、直説法過去1, 3人称単数の過去語幹を「第1過去語幹」、それ以外の過去語幹を「第2過去語幹」ということにする。

細かい例外もあるが、大まかな各屈折語尾は以下のようになる。上の4グループの語幹をそれぞれ [pre.], [1st.pas.], [2nd.pas.], [p.p.] と示す。なお直説法現在2, 3人称単数は変音することがある。

屈折語尾
不定詞主格与格
[pre.]-an[pre.]-enne
直説法現在過去
1人称単数[pre.]-e[1st.pas.]-∅
2人称単数[pre.*]-(e)st[2nd.pas.]-e
3人称単数[pre.*]-(e)þ[1st.pas.]-∅
複数[pre.]-aþ[2nd.pas.]-on
接続法現在過去
単数[pre.]-e[2nd.pas.]-e
複数[pre.]-en[2nd.pas.]-en
命令法
単数[pre.]-∅, -e
複数[pre.]-aþ
分詞現在過去
[pre.]-ende(ġe)-[p.p.]-en

クラスI

rīdan “to ride”
不定詞主格与格
rīdanrīdenne
直説法現在過去
1人称単数rīderād
2人称単数rītstride
3人称単数rīttrād
複数rīdaþridon
接続法現在過去
単数rīderide
複数rīdenriden
命令法
単数rīd
複数rīdaþ
分詞現在過去
rīdende(ġe)riden

幹母音の変化は ī - ā - i - i、現代英語だとride, driveのように iCe - oCe - iCen と変化する不規則動詞に相当する。

なお直説法現在2人称単数の語尾 -st が有声子音の後に来ると、その子音は無声化する。また直説法現在3人称単数の語尾は本来 -(e)þ だが、語幹末子音が t, d, s の場合 -t となる。